骨粗しょう症は、もともと人間の老化の過程の一つであるともいえます。以前のように長生きする人が少なかったころには別に問題にはならなかったのが、現代のようにだれもが70から80歳まで生きる時代になったためにその数が増え、注目されるようになったのです。骨粗しょう症の最大の問題は、「骨折しやすくなる」ということです。特に脊椎骨や大腿骨の骨折は、寝たきりの原因になることもあります。
骨粗しょう症の診断は、この骨折しやすい部位でするのが最も理にかなっています。以前は腰や大腿骨のレントゲン写真を撮って、それをもとに骨粗しょう症の診断をしていましたが、最近はいろいろな測定方法が開発されて、機械で簡単に調べられるようになりました。
主な測定方法には、手の骨とアルミニウムの板をレントゲン写真に撮りその比較で見る方法、かかとの骨を超音波で調べる方法などがありますが、現在もっとも正確とされているのがDEXA法といわれるものです。機械にもよりますが全身から腰椎、前腕骨などの部位別に骨塩(カルシウムを含めた骨の全成分)の量を測定することができます。
現在の骨粗しょう症の診断基準は、脊椎のレントゲン写真と機械による検査とを組み合わせたものになっています。まずレントゲン写真で脊椎に圧迫骨折があるかどうか見ます。その上で骨がどれだけ薄くなっているか判断します。
あるいは骨塩量を測定して、若い人たちの平均と比べてどれだけ少なくなっているかも比較して、70%以下だと骨粗しょう症と診断されます。骨塩量の測定は原則として腰椎でしますが、腰椎では評価が困難な場合に他の部位の骨塩量を用いるとされています。
骨粗しょう症の検査は、まずは骨密度が測定されます。測定法としては、X線を使ったDXA(デキサ)法、MD(エムディ)法、超音波を使った超音波法があります。どれも苦痛がなく短時間で行われる検査法です。
また、骨が壊され・作られる状態を、血液や尿の検査で調べる骨代謝マーカーという診断方法もあります。エックス線や骨代謝マーカーでは、骨粗しょう症以外の病気が潜んでいないかどうかなども診断していきます。このほかに、レントゲン撮影で骨折の有無が調べられたり、血液検査、尿検査や身体測定も行われます。
血液検査と尿検査は、骨粗しょう症を他の病気と区別するためにも行われます。身体測定は、25歳のときの身長と比べどのくらい縮んでいるか診断します。これは骨粗しょう症の指標になります。骨粗しょう症の診断には、生活習慣も重要な手がかりとなります。過去の健康状態(既往歴)、普段の食生活、運動習慣などが聞かれますので、検査前に整理しておきましょう。
骨粗しょう症の診断は、骨量測定だけではなく、問診や圧迫骨折骨があるか、もし痛みがある場合は、骨粗しょう症が関係しているかなど、胸椎と腰椎のエックス線を使って検査します。検査の結果骨粗しょう症または骨量減少と診断された場合は、できるだけ早く治療や骨折予防対策を始めましょう。適切な治療や生活習慣の改善により、骨密度の低下をくい止めることができます。骨折予防は寝たきりになるのを防ぎ、健康な生活を送るうえでとても大切です。
骨粗しょう症の食事療法は、特にカルシウム、ビタミンD、ビタミンKなど、骨密度を増加させる栄養素を積極的に摂取し、骨を丈夫にすることです。カルシウムとビタミンDを同時に摂りますと、腸管でのカルシウム吸収率がよくなります。また、タンパク質の摂取量が少ないのも骨密度の低下を助長しますので、食事量が少なくなりがちな高齢者の方は注意が必要となります。
ではカルシウムを多く含む食品はどんなものがあるのでしょうか。牛乳、乳製品、小魚、干しエビ、小松菜、チンゲン菜、大豆製品などに多く含まれます。なお、カルシウムの摂取目標量は、1日800mg以上です。高齢者の場合、800mg摂取することで、体内のカルシウム出納がマイナスにならないことが分かっています。
次にビタミンDを多く含む食品は、サケ、ウナギ、サンマ、メカジキ、イサキ、カレイ、シイタケ、キクラゲなどに多く含まれています。ビタミンDの摂取目標量は、1日400~800IU以上です。ビタミンKを多く含む食品は、納豆、ホウレン草、小松菜、ニラ、ブロッコリー、サニーレタス、キャベツなどに多く含まれています。
ビタミンKの摂取目標量は、1日250~300μg以上です。また、塩分のとりすぎには十分注意しましょう。塩分をとりすぎるとカルシウムの利用が悪くなります。あまり知られていませんが、リン、マグネシウムも必要な栄養素になります。
リンは穀類や肉類に、マグネシウムは幅広い食品に含まれ、両方とも骨の材料になります。ただし、リンのとりすぎはカルシウムの吸収を妨げるので気をつけましょう。栄養素を意識しながら、栄養やカロリーのバランスがよい食事を規則的に取るのが、食事療法の基本となります。
骨量を増加させるには、適度な運動が必要になります。40から60歳の女性を対象とした調査で、運動習慣がある人は、運動習慣がない人に比べて骨量が明らかに高かったという結果が出ており、運動は重要であると言えます。
運動は、心臓や肺の病気がないか、また高齢者では関節などに問題がないかなど、医療機関の診断の上で行うこととなります。推奨される運動としては、ウォーキングやジョギング、水泳やストレッチなどの体操があげられます。
買い物や通勤など日常生活の中に簡単に取り入れることができ、年齢を問わず、マイペースにできる運動といえば、まずウォーキングをあげることができるでしょう。歩くことは心肺機能を高め、骨の強化に役立つ運動です。エスカレーターやエレベーターを使わず、ゆっくり階段を上がったり下がったりするのも一つの方法ではないでしょうか。
中高年期、足腰が弱くなった人など、体を動かすことが困難な人などの運動としては水中運動などが骨粗しょう症の予防に効果的です。水中で運動することの最大の利点は、浮力を利用するため、体重の負荷をかけることなく、安全に運動できる、という点です。
泳げないという人でも、水中を歩くだけなら気軽にでき、その人の状態に合わせ負荷を変えることができます。ゆっくり歩けば水の抵抗が少なく、速く歩けば水の抵抗が大きくなります。慣れるにしたがって、水中を歩く速度を速めて歩くことによって、大きな抵抗を受ければ、効率よく筋力を鍛えることができます。
足腰が弱くなった人、足腰が痛くて体を動かすことが困難な人などは、家の中でできる無理のない程度の簡単な体操をやってみることも骨粗しょう症の予防、症状改善には効果的のようです。朝起きた時、就寝前などリラックスしている時などに始めてみてはいかがでしょうか。
食事や運動だけでなく、薬の力も使って骨粗しょう症を治療していきます。骨粗しょう症の治療薬は、骨量の減少の抑制、骨量の増加、骨折の予防を目的に使用します。治療薬は、1週間2週間で内服効果が現れるものはありません。半年毎に骨量を調べながら薬の内服を続ける必要があります。骨粗しょう症の薬物療法の原則は、日本人は平均してカルシウムの摂取量が少ないため、基礎治療薬としてカルシウム剤が併用されて利用されることが多いといえます。
閉経後の更年期の女性では、骨量の減少に対して女性ホルモンの補充療法がよいとされますが、女性ホルモンの使用できない場合や使用をしたくない場合などには、ビスフォスフォネート製剤が第一選択とされます。
骨粗しょう症薬物療法は、ガイドラインによると原則としてひとつの薬で治療を開始することがすすめられ、経過を見て1種類の薬で効果が見られない場合や効果が頭打ち状態になった場合には、他の薬剤に切り替えたりします。重症の場合は、作用機序の異なる薬を併用することも考えるとされていますが、薬剤変更の基準は明確ではなく、実際にはいくつかの骨粗しょう症用の薬を組み合わせて使用していることが多いのです。
骨粗しょう症薬物療法の基本になるカルシウム製剤は、活性型ビタミンD3製剤との併用においてはカルシウムが過剰にならないように注意が必要ですが、すべての薬との併用が勧められています。骨粗しょう症の薬物治療を行なうに当たって問題とされるのは、まずどういう薬剤を使用するのか、薬剤選択の問題や薬剤使用効果の予測の困難さがあげられています。
また、効果が見られない場合には、他の薬剤への変更が必要になりますが、効果判定の基準はどうするのか、あるいはどんな薬剤に変更するのがよいのかなど明確にされていない問題も多々あるのです。また、ホルモン補充療法に伴って乳がんのリスクが高まるなどの薬の副作用の問題や投与期間はどの位が妥当なのかなど未解決の問題も多いのです。こうした問題点が整理されて、より骨粗しょう症の薬物治療の効果が上がるよう期待されています。
閉経後は、ホルモンのバランスが崩れ、骨粗しょう症に限らず更年期障害や動脈硬化などに悩む女性が多いのが現状です。それらの予防と治療の両面で、ホルモン補充療法が有効とされています。女性らしさをつくるとともに、女性の健康に欠かせないのが女性ホルモンです。これにはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の 2 種類があり、主に卵巣で作られています。
卵巣の働きは、40歳ぐらいから衰え始め、閉経後は止まってしまいます。この結果、骨粗しょう症など心身両面で健康に影響してくるわけです。そこで、女性ホルモンを補充して、女性の健康維持を図るのがホルモン補充療法なのです。
具体的な治療は、通常、45歳のレベルの女性ホルモンを補充します。内服薬と貼付薬があります。その効果は、エストロゲンの低下とともに起こる骨量の減少を防ぎ、動脈硬化の予防効果もあります。最近は、物忘れにも効果的だと報告されています。
一方で副作用ですが、短期的に月経のような出血が見られたり、乳房の張りや痛みを感じる敏感な女性もいますが、これらは生理的な反応です。女性ホルモンが効いている証拠で、慣れてくると自然に消失します。また、40歳半ばのレベルの女性ホルモンを補充するわけですから、乳がんだけでなく、総合的な健康管理の意味でも、定期健診は欠かせません。
日本でホルモン補充療法を受けている女性は、欧米の20分の 1 程度にすぎませんが、これは、この治療法をよく知らなかったり、誤解したりしている可能性があります。ホルモン補充療法は、更年期からの健康管理はもちろん、生活の質を保つ上でも有効なので、希望者は最寄りの婦人科で相談してみるとよいでしょう。